< 真空管の部 >
■ 作品番号:T01
1)技術
コンパクトロン6BD11(5極・3極・3極複合管)を使用したトリプルレフレックスによる
スーパーヘテロダイン方式。 5極管のハイインピーダンス入出力回路で、いかに安定度と
利得を確保するかがポイント
本作品は、ミキサーにダイオードDBMを用いたことにより解決しているが、DBM(低Z)
と真空管入出力(高Z)とのマッチング、各段のシールド、回り込み、リークなどによる
不要信号の混入抑制に苦労された様子が伺えます。
使用球や回路は昨年の作品で実証済みであり、今回はHROに拘らず作りやすいように各部
品を配置し、トリプルレフレックスとプラグインコイルの採用で、コンパクトで実用的な
受信機に仕上がっています。
2)趣意
当初の制作意図であるシングルスーパー+再生検波式からダイオード検波に方針変更さ
れて、SSB/CWが受信できないのは惜しまれますが、BFOとして外部から SG信号等を供給す
ればSSB/CWも受信できるよう考慮されており、オールウェーブAM受信機としての完成度は
素晴らしい。
3)意匠
ナショナルラジオ(USA)の古いバーニアダイアルとモノトーンでまとめたデザインが、
ビンテージ受信機そのもので、作者の拘りが強く感じられます。
上蓋を開けることにより、コイルの差し替えだけでなく、音が正面に出るようになって
いる?点が面白い。
4)その他
ビンテージラジオコレクションと一緒に並べたら、誰も自作品とは気づかないでしょう!
■ 作品番号:T02
1)技術
5極・3極複合管6LF8を使用し、RF/AF増幅を5極部でレフレックス増幅、3極部で再生検波を
行う3.5/7MHz用ストレート受信機
ユニークなのは、RF入力側のミュー同調機構と、再生検波回路のプレート電圧安定とPLを
兼用したネオン管の採用
真空管は当初計画ではコンパクトロンの6M11であったが、安定動作の点から6LF8を採用
された。複合管の使いこなしの難しさと 製作過程での苦労・工夫が伺えます。
2)趣意
本作品の製作意図は、1本の真空管で再生レフレックス方式の受信機製作し実用性を試す、
ということですが、3.5/7MHz帯ではアンテナと空中状態によって実用性が左右されることは
否めません。満足する感度が得られなかったと仰っているが、受信条件が整えばある程度の
実用性は得られると思います。
3)意匠
無塗装のアルミパネルとバーニアダイアル、そしてダイモテープが、自作らしさを引き
立てています。受信機として使い勝手の良い、機能的なデザインだと思います。
4)その他
シャーシー、パネルも素材の板から加工され、ミュー同調機構も身近な材料を用いて自
作され、フルストロークでのインダクタンス変化幅は約9倍を得られています。
昨今のアマチュアが忘れたもの、それは自作の楽しさです。この作品は自作の楽しさ/
苦しさに溢れています。
■ 作品番号:T03
1)技術
V/UHF出力用の双ビーム送信管832Aを、ラジオ放送受信用に使うという発想がユニークで
す。回路方式は再生検波+AF増幅の一般的な0-V-1ですが、832AはUHF/PP増幅専用管であ
るため2管のカソードとSGが共通ピンになっていて検波と増幅の最適動作点を個別のG1電圧
(AF増幅側は別の−C電源から供給)で調整しなければならず、発振対策として位相反転
トランスを使用するなど、苦労・工夫の跡が見られます。
2)趣意
特殊送信管 832A(ハチミツ A)を使った、製作者(養蜂家)の拘りを実現させたことが全
てだと思います。
再生式ラジオ特有の、受信時の再生調整の煩わしさを「実用的ではない」と仰っているが、
それも楽しみのうちでしょう。
3)意匠
昔懐かしく、カネゴンのように愛嬌のある832Aが見えるようにシャーシー上にむき出しに
したデザイン、デリカのV/UHF送信機を思い出すOM諸氏も多いのではないでしょうか。
製作者の狙いもそこにあったのかも。
4)その他
受信周波数範囲が600〜1800KHzであった点、地元放送を聞くには十分だったと思われますが、
本コンテストの要求する基本機能の範囲「531〜1602KHzをカバー」からは外れることと
なります。(※調整可能と思われます)
■ 作品番号:T05
1)技術
3〜8MHz短波受信用、 RF・IF・AFをコンパクトロン6CA11(5極・3極・3極複合管)の5極部で
レフレックス増幅させ、3極部で局部発振、もう一つの3極部でBFOを構成した、スーパー
受信機
安定動作のため、入出力間にアイソレーションのあるダイオードDBMを用いたことが成功
の秘訣であったと思われます。5極部のRF/IFプレート出力の取り出し方に苦労・工夫が
みられること、複合管1本でBFOまで内蔵させSSB/CW受信を可能にした点は素晴らしいです。
2)趣意
前回の作品でトリプルレフレックスの7MHzAM受信機の可能性を実証された上で、今回は
SSB/CWも受信できるようにBFOの追加にチャレンジされた制作意図と、目標とした仕様・性能
は十分に達成されています。
3)意匠
HROタイプのPWダイアル(国産品)を使用したこと、アルミパネルにSメーターなど、往時
の自作受信機のデザインです。
パネル面の文字入れ・塗装などのデザインは二の次、性能優先は当時の自作機の常でしたが、
実用的には必要十分を満たしています。
4)その他
作品説明書には再生検波を使用した旨の記述もありますが、感度はRF/IF増幅を付けたことで
十分であり、操作安定性を重視してダイオードDBMを最終的に採用したと思われます。
Sメーターが単なる飾りになってしまった点が惜しまれます。
■ 作品番号:T07
1)技術
3極5極複合管6AB8を用いた、再生検波+AF増幅のオーソドックスな中波ストレートラジオ
3極部と5極部のカソードが共通ピンであるため、検波側グリッドリークの帰路をカソードに
接続したこと、プレート負荷に200Hのチョークコイルを用いるなど、検波動作の適正化と検波
出力の増大を図っています。再生量の調整で音量調整も兼ねる思い切りの良さと共に、初心者
のお手本となるシンプルな回路構成に好感が持てます。
2)趣意
過去の参加作品も含めて、製作者の作品は、部品の入手性も考慮して初心者が安心して作れる
良いお手本を示しています。
「単球複合管を用いたAM受信機の製作」という製作意図は、地元放送局を安定して受信できる
ことで十分達成しています。
3)意匠
木目を生かしたシンプルなパネルです。バリコンの回転とダイアル目盛角度が合っていないの
が気になるところですが、手持ち部品を有効活用した結果でしょうか。
4)その他
回路図にネオンランプが抜けています。
■ 作品番号:T08
1)技術
入手しやすい6AW8A(3極・5極複合管)を用いた中波放送用のスーパーヘテロダイン+IF/AF
レフレックス方式のラジオ
IFTがローインピーダンスのリンク巻線があるT-38A(トリオ)の採用で、ダイオードDBMとの
整合、及び、IF増幅5極部のプレート側接続で安定化を図っている。前2回のコンペで蓄積した
ノウハウを基に、ダイオードDBMのロスをIF増幅の高利得がカバーして、昨年を上回る感度・
選択度を達成しています。
2)趣意
「前年製作の単球スーパー・レフレックス・ラジオを部品面から見直し、より高感度化を図る」
という製作意図を、見事に達成しています。日本酒の化粧箱(桐製)をケースに使用し、ケース
の背面に穴を開けて音域補正していると思われる点も面白いですね。家庭内の不用品(スピーカ
FE103Σ、お酒の桐箱)が有効活用されています。
3)意匠
ダブルスピーカーと中央の大きなダイアルによる左右対称のデザインが、現代の環境に違和感
なく溶け込み、お洒落なインテリアにもなり得ます。その場合、電源部は隠した方がいいかも。
4)その他
本作品の周波数範囲が「概ね600〜1500KHz」ということで、531KHz迄カバーしていないとすれば、
本コンテストの中波ラジオの基本機能(受信周波数)を満たしていないことになります。
(※調整可能と思われます)
電源部は、筐体内部に余裕がありますので製作品で完結が望まれます。
■ 作品番号:T09
1)技術
3極・5極複合管6AW8Aの、3極部を周波数変換(自励発振式ミキサー)に、5極部をIF/AF増幅の
レフレックス方式とした、スーパーへテロダイン+レフレックス方式の中波ラジオ
ミキサー部で変換利得があり、ダイオードDBM方式より感度が優れると思われます。5極部は
高Gmで、IFTのインピーダンスによっては発振することがあり、発振防止に苦労と工夫が
みられます。
自励ミキサーの採用は、本コンテスト参加作品では唯一のものです。
2)趣意
「単球(複合管)のスーパー方式がどれ程実用になるかの実証と、 既製品トランジスタラジオ
のケースの活用」という製作意図は、実用性能の獲得とケースの仕上げの美しさで見事に達成され
ています。
3)意匠
市販のトランジスタラジオのケースを利用した筐体ですが、「水性工芸うるし」で再塗装し、
漆塗りを思わせる鏡面仕上げの美しさが秀逸。木目調のつまみもよくマッチしていて、豪邸の居間
にも置ける家具調クラシックラジオのようです。
4)その他
トランスまで巻き替えて、必要なものを製作する匠の技に脱帽です。
低周波出力トランスにトランジスタラジオに使われていた電源トランスを改造し、シングル動作の
直流重畳対策に EIコアをラップ ジョイントからバットジョイントに組み替え、二次巻線も巻替えて
10kΩ:8Ω仕様にしています。
■ 作品番号:T10
1)技術
3極・5極複合管6U8を使用して、5極部で再生検波を、3極部でクエンチング発振させて5極部を
スイッチングする、他励式超再生検波を意図した、中波ラジオ
超再生検波はかって3A5を使用し50MHz帯で実用化されており、スーパーヘテロダイン方式に
比較し得る感度が特長であったが、短波帯や中波帯での実用例を聞かず、まさにチャレンジです。
製作途中で時間切れとなり、超再生検波動作にまで到達されなかったのは残念です。
2)趣意
中波帯での超再生検波の実現がテーマでしたが、過去このようなチャレンジは少なく、ぜひ実験
を続けて完成されることを期待します。
3)意匠
ケースは、前面・後面ともアルミのL型アングルを使った自作品で、コンパクトに組ま
れています。回路調整に手間取って、パネルに文字入れや塗装する時間が取れなかったの
でしょう。
4)その他
巻き線機を使って巻いた自作コイル、ケース内部の部品配置・配線もきれいに纏まって
おり、自作に手慣れた感じが伝わります。
巻線機カウンターに、万歩計を活用されています。
■ 作品番号:T11
1)技術
本作品は「GE Electronics Components Hobby Manual 1965」に掲載されたコンパクトロン
6AF11を使った0-V-2方式全波再生ラジオをベースにして製作したものです。
原典では再生調整を検波管のプレート電圧で行っているが、強力な信号が入ると歪むので、
再生コイルの結合度を抵抗で調整する方法に変更するなど、細部について製作者の試行・
工夫の跡が見られます。
プラグインコイルによる、中波帯、3.5MHz帯、7MHz帯の3バンド差換え方式で、中波帯は
バリコンで中波放送範囲をカバーし、3.5MHz帯、7MHz帯ではハムバンドをスプレッドカバー
するようにされています。
2)趣意
製作者は「原典のラジオの機構・構造が非常にコンパクトに格好良くまとまっている ので、
その魅力を継承したかったが、(使用パーツ等によって)全体が大きくなってしまい
平凡なパネルデザインになってしまった」と仰っていますが、ベルベットバーニアやフレキシブル
ジョイントなど使用パーツのクオリティとパネルデザインは、原典を超えていると思います。
電源を内蔵した点も、実用的です。
3)意匠
製作者の好み・拘りと思われる「軍用測定器風」のデザインで、一見して自作を感じさせない
出来栄えです。
検波管のIpをメーターで監視しているのは、技術的必然性なのか、デザイン目的なのか謎
ですが、メーターの存在が本機のそれらしさを引き立てているのは事実です。
4)その他
昔の自作品は性能優先で、デザインは二の次というものも多かったが、本作品は製作する
楽しみ、放送やハムの交信を聞く楽しみ、飾る楽しみの3つを満足させてくれると思います。
■ 作品番号:T04(途中棄権)
1)技術
5格子変換管UZ-135を用いた、中波帯超再生検波ラジオのチャレンジ。高Qのダイヤモンド
ウェーブコイルの採用など、技術的探究心を刺激する作品です。残念ながら実験段階で
リタイアされました。
2)趣意
中波帯の超再生ラジオは殆ど例を見ず、再チャレンジに期待します。
3)意匠
4)その他
■ 作品番号:T06(途中棄権)
1)技術
NUTUBEという新しい真空管をどのように料理するか、第1回のコンペでユニークな遊び心
あふれる作品を発表されていただけに、興味津々でした。ラジオ検波段に使用した例はいまだ
見かけません。次回リベンジに期待します。
2)趣意
3)意匠
4)その他
以上
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