球式SBMとLCフィルタによる周波数変換回路            最新改定 2024.Jun.20 JH3FJA

 Facebookのグループ:真空管式無線機で投稿話題にあったSSBハンドブックに登場する6AL5と6AU6によるシングルバランスドミキサと後段の複同調LCフィルタによる片方の側波帯選択を行う構成の動作特性を回路シミュレータで求めてみたものです。

話題(お題)の回路図
SSBハンドブック 第6.17図  SSBハンドブック (CQ出版社,1969年初版)を調べてみると これは第6.17図、254頁でした。
 入力は何らかの方法で得られた455KHzSSB信号、望む出力は3.5MHzSSB信号、ダイオードシングルバランスドミキサとLCバンドパスフィルタでの構成でSSB信号の周波数変換が意図されたものです。 ミキサへのローカル信号3955KHzはVFOを信号源として 6AU6のカソードから同位相の信号、プレートから反対位相の信号を得てミキサへの入力とし2つのダイオードをスイッチングします。 ミキサにとってのIF信号である455KHz信号は複同調回路の出力側の2つ共振コンデンサで電位分割され3.5MHzバンドパスフィルタの455KHzに対しては極く低めのインピーダンス(40オーム程度)でコモン電位に繋がることでミキシングダイオードの中点に印加されます。 一方ミキサ出力である 3955KH+455KHz成分 と 3955KHz−455KHz 成分(望む成分)は、先出の分割コンデンサのインピーダンスがこれらの信号に対し小さいこと(150オーム程度)と455KHzIFTのコイルのインピーダンスが大きい(22Kオーム程度)ことより影響されず3.5MHzLCバンドパスフィルタ側に出力されます。

回路シミュレーションモデル化
 6AU6による平衡ローカル信号作りの部分は簡素化することも可能でしたが 6AU6マクロモデルは過去に模擬度が高いことを経験していましたのでここでの歪も気になるので丸きり全体を対象に回路シミュレータで描きました。 バランス調整の可変キャパシタ(C5, 2PF)の位置がハンドブックオリジナル回路と違う点および455KHzIFT出力にもバランス調整のキャパシタ(C7, 2PF)を付加しています。これらは配線等のストレイキャパシタンスまでもを回路シミュレーショモデルでは扱っていないためです。


シミュレーション結果
 出力点での電圧スペクトルです。3955KH信号の低減はバランスドミキサのバランス調整により得られるもの、また、4.41MHz(= 3955KH+455KHz)成分の低減はLCバンドパスフィルタ裾野の減衰特性によって得られたものです。意図された周波数変換回路としての機能を充足しています。


 下図は、3.5MHzLCバンドパスフィルタ部の単体特性です。200Kオームのダンプ抵抗は3.5MHz通過域の単峰特性を得るのに役立っています。


<LTSpice回路モデル>
  右ボタンクリックでダウンロードできます。
 回路モデルファイル
 回路モデルファイル(ローカル信号源簡易)



話題回路の大元情報
 JA3EGW局が本話題回路の元出典について調査なさいましたので掲げておきます。

 元ネタはARRLの"SSB for the Radio Amateur"誌であり、更にその原典はQST誌1952年9月号の"The Series Balanced Modulator"(副題:A New Circuit for Transmitters and Receivers)と題する記事(BY FRED M. BERRY, W0MNN)である。
 頁46のFig.1とFig.2は平衡変調器の回路、頁47のFig.3が話題のSSBハンドブックの回路の原典で、米国75mバンドに対応した455Kc入力3.9Mc出力の周波数変換(Balanced mixer)回路である。




80m_sbm_lcfil.htm

Rev1:2024.Jun.20 大本情報を追加
作成:2024.Jun.15