東ドイツ真空管ラジオ EMUD T7 の局発回路              最新改定 2021.Mar.31 JH3FJA

まえがき
 Facebook真空管無線機グループで高知のKさんの真空管ラジオEMUD T7の故障修理を助勢しました。 1957年東ドイツ製のFM・中波・短波のラジオで、FMは正常に受信でき 更には中波短波のIF増幅部および低周波増幅も動作しており、中短波の局部発振回路が発振していないと判断できる状況でした。 故障箇所は1つのコンデンサ(C38/350PF)と1つの接点(ミキサRF入力)と判明・回復しましたが ここでは 道中考察の ちょっと珍しい局発回路 について記録を残しておきます。

当該回路
 左の図において球ECC85(双3極管)はFMバンドのヘテロダインミキサとFM局発、その右 球ECH81の7極管部は中波および短波バンドのヘテロダインミキサとFMモードでのIFアンプ、同球3極管部は中波および短波バンドの局部発振回路をそれぞれ形成しています。 この3極管部による発振回路構成はユニークで 中波バンドでは共通インピーダンス(右下の方の350PF、故障コンデンサでもあります)による結合を持つ複同調風、また 短波バンドでは一般的なM結合のプレート・グリッド帰還系による2態の発振回路になっています。


 元資料: http://www.kuroshio.org/emud_t7/emud_T7_all.pdf

中波局発回路特性
 まず 発振回路を開ループにしてプレートからグリッドまでのパッシブ回路で周波数特性を見てみます。

L5(プレート側)・C38で固有値が中波局発周波数より高めの共振系を、L6・C37・バリコンVC・C38で中波局発に対応した共振固有値が与えられます。 R15は共振特性へのダンプです。VCとC38は直列ですから共振容量はバリコン単独より低減してしまいますがC38だけを介して(L6、L5間の結合は不要)安定した帰還量を与えられそうです。

上段: 振幅特性
下段: 位相特性

赤/VC=350PF
青/VC=140PF
黄緑/VC=40PF

 3極管と+B電圧元を付加し発振回路にして発振波形とそのスペクトルを見てみます。

欧州球ECH81のシミュレーションモデルが無いので12AX7のマクロモデルを適用しています。 なお、L5(プレート側)のインダクタンス値は現物写真からの推測です。

ECH81 tubedata
 発振開始から定常状態に至るプレート電圧(V(p))およびグリッド(V(g))の電圧波形です。



V(g)
グリッド電圧



V(p)
プレート電圧



V(g)
グリッド電圧



V(p)
プレート電圧

 グリッド電圧波形をFFTしたものです(発振開始過渡は解析から除外)。



V(g)
グリッド電圧



改定来歴:  2021.Mar.31 作成