超再生受信回路 その1 負性抵抗による振幅増大           最新改定 2023.July.21 JH3FJA

 その1では超再生受信回路での感度付与の要となるLC並列共振回路への負性抵抗器の付加による振幅増大をとりあげています。
LC減衰振動 負性抵抗による減衰の補償 LC回路+負性抵抗による振幅増大

LC減衰振動

 下図のLC並列回路においてCの初期値(直流電圧)は同じ条件で閉路の損失抵抗Rを変え過渡電圧変化を見ると、自由振動の周波数は同じで減衰形態はどれも対数変化を示しますが、自由振動の最大振幅およびゼロ収束時間は損失抵抗に依存します。

負性抵抗による減衰の補償

 上述のLC振動の減衰変化は 閉回路内に損失となる抵抗分がある限り生じてしまうので 振幅の増大を図るために 減衰振動の周期・振幅変化に合わせた変化をする外部エネルギを注入します。 これは丁度 ブランコに載ってる人が姿勢変化で重心点を動的に変える動きで振れを拡大しようとする様なもので、下図のように LC共振回路に負性抵抗器を付加することで実現できます。

<負性抵抗の概念>

 正の抵抗器(ごく普通の抵抗)は回路からのエネルギをジュール熱として消費しますが、負性抵抗器は回路にそれと同じエネルギー量を逆に供給をします。 同じ電流 I が正の抵抗と同じように負の抵抗を流れる場合、正の抵抗では 電圧降下V = RI が回路から差し引かれるのに対し、負の抵抗では 電圧V = RI を回路に向かって追加的に供給します。 正の抵抗が2端子の電流/電圧降下変換するのに対し 負の抵抗では電流/電圧上昇変換をします。
 が 負性抵抗器は一般の定電流源などと違い、電圧がそれらを流れる電流に線形的に依存するか、あるいは電流がそれらの両端の電圧に線形的に依存するエネルギ源であり 自身単独では何の動作もできない性質のものです。
 下図のオペアンプによる負性抵抗器回路はNIC(negative impedance converter)と呼ばれ 次の電圧式と電流式から R1=R2 に採れば 負性抵抗−Rが簡単に得られます。




 左図はR1=R2=R=10Kオームに採った10Kオームの負性抵抗器の特性です。 VI特性は原点を通り 第2象限および4象限にあります。 例えば入力電流 i として2mAが外部から流れ込んでいる状態では 入力端電圧V は−20Vに、電流方向が逆の2mAが外部に流れ出ている場合は+20Vになります。


LC回路+負性抵抗による振幅増大

 上述の通り負性抵抗値を選ぶことでLC回路での振幅増大を任意の電圧倍率で行えます。
 下図はシミュレーション計算開始時点のコンデンサCの充電初期値を1μVに採り 20ミリ秒までの増大の様子を3種類の負性抵抗値で眺めたものです。
付加する負性抵抗 8Kオーム 付加する負性抵抗 10Kオーム 付加する負性抵抗 15Kオーム
 また当然のことながらLC回路への入力電圧値の大小を問わず同じ増大倍率で作用しますから増大した電圧は元の入力の振幅を踏襲します。
 下図のグラフはコンデンサCの充電初期値を変え振幅増大を眺めたものです。 20ミリ秒後の増大振幅とCの充電初期値の比は一定ですので この構成を増幅手段に利用できそうなことが分かります。
初期電圧 20ミリ秒後の振幅 増大倍率 備考
0.1μV 600mV 600万倍
1μV 6V 600万倍
10μV 60V 600万倍

Cの充電初期値 0.1μV Cの充電初期値 1μV Cの充電初期値 10μV

 このように負性抵抗を与えることによって元の共振回路は あたかも大きなQを持った共振回路の如く挙動し、その振幅応答倍率によって感度を高めることが可能になります。
 下図は元の共振回路と負性抵抗を付加した共振回路の周波数・振幅特性を比較したものです。
元共振回路と負性抵抗付加共振回路
周波数・振幅特性

END

改定来歴:
 2022.July.30 作成
 2023.July.21 周波数・振幅特性を追加