かご型フォールデッドモノポールアンテナ(その1)       最新改定 2021.Oct.05 JH3FJA

 ここでは2つの構成のフォールデッドモノポールアンテナについて公開文献からその構成や特性を中心にまとめています。
 また(その2)ではこれら知見から160mバンドのフォールデッドモノポールアンテナを検討しています。

フォールデッドモノポールアンテナとは

フォールデッドモノポールへの変形  モノポールアンテナは、アンテナ形態の類型名で、ダイポールアンテナの半分だけの形態で大地や金属製グランドプレーンによる電気的な鏡像を利用し疑似的にダイポール動作をさせるものです(鏡像側に陽な電源はありません)。 モノはギリシア語の「1つ」、ダイは「2つ」を指します。 フォールデッド「折り返し」はモノポール構造体を折り曲げた形態を指します。 これらはコンパクトなシルエット形状のアンテナを実現する1つの手段になります。

NHK中波放送用にみる かご型空中線

かご型フォールデッド例
 左図は下記参考文献にある 小出力の中波AM送信用の かご型フォールデッドモノポールアンテナです。 中心導体をテレビ・FMアンテナタワーおよび付帯の構造物に採り その周囲に複数の導体ワイヤ(ダウンリード)をタワー脚下部まで配し かご状とし周囲導体の下部から給電、タワー構造物上部を折り返し位置としてフォールデッドスタイルのアンテナとしたものです。 タワーおよび建屋内送信機材は地面下カウンタポイズに繋がり接地されますのでトップエレベーション37.5mの8分の1波長モノポールアンテナになっています。
 なお 頂部からの傾斜ワイヤは容量冠として作用し輻射パタン・輻射効率を改善します。

参考文献(1):
 テレビ送信鉄塔柱を利用した中波かご形空中線の実用化
 テレビジョン学会誌 Vol.49, No.2, p125〜128 (1995)
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 このスタイルのアンテナの特許を調べてみると、八木アンテナ(株)が出願の実用新案( 実開平5-74009 ) があり、公知の かご型に加え頂部折り返し位置でのインダクタによるローディング、頂部からの傾斜ワイヤの伸展により送信周波数帯域を狭めることなく放射効率の良い短いアンテナの提供とし比較的詳細な特性計算結果も示されています。 それらから代表的特性を以下に掲げます。

実施例に係る構成図
 左図は実開平5-74009 での 実施例に係る空中線の構成図です。以降の該空中線の特性データは次の緒言で計算されたものです。

 中心導体 : 高さ h=20m、導体半径 d=150mm、接地抵抗 R1=10オーム
 外部導体 : 4本、導体半径 r1=3.5mm
 ローディング線 : 4本、長さ l=0、10、20m、下端位置 半径 r=5m
 ローディングコイル : L=0、50、100μH
 給電点接地抵抗 : R2=10オーム


ローディング線の効果
<ローディング線の効果>
 このグラフは頂部から傾斜して伸展したローディング線の効果を輻射効率の変化に着目し示されています。 横軸はその周波数の1波長を2πとしたもので k=2π/λ 、 8分の1波長は横軸の0.785位置になります。
 この1枚のグラフだけからの判断ではないと思いますが 中心導体高さ(H)の半分位の長さが効果的だと説明されています。

ローディングコイルによる給電点インピーダンス変化
<給電点インピーダンス>
 このグラフはローディングコイルLのインダクタンス変化による給電点インピーダンスの変化が示されています。 (A)が抵抗成分、(B)がリアクタンス成分でローディングコイルのインダクタンス値変化で共振固有値が変えられインピーダンス特性も比較的単調に変化することが分かります。
 これらは計算結果ですが 参考文献(1) での実測結果での変化の様子は一致します。


第2共振点を使う かご型フォールデッドモノポール

 IEEEのデジタルライブラリ に次の大変参考になる論文がありました。 対象は中波AM放送用かご型フォールデッドアンテナですが 上のNHKのものとは異なり50オーム直接給電(self tuning) に拘った検討になっています。

 参考文献(2):
  MF AM folded monopole characteristics
  January 2003 IEEE Transactions on Broadcasting 48(4):324 - 330
  DOI:10.1109/TBC.2002.806192 SourceIEEE Xplore
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かご型フォールデッド
 対象アンテナは左図の形状で 中心導体は四角タワー、周囲導体は六角形の上端部リング、同下端部リング、上端部・下端部リングの各頂点を長手方向に結ぶワイヤ6本で構成、ケージの上部では中心導体から放射状ワイヤでケージ上部リングと接続され同軸状のケージの終端を短絡したような形態になっています。 具体的な緒言は次の通りです。

 中心導体 : 高さ H=72m、ステー保持三角タワー 一辺 W=45cm
 ケージ導体 : 6本、配置外径 D=4m、導体半径 d=8mm
 ケージ下部リング対地空間 S=3m
 適用周波数 : 1520KHzAM放送

給電点インピーダンス特性
 給電点でみたインピーダンスの抵抗成分とリアクタンス成分のグラフです。 黒丸が計測周波数を変化させての実測値プロットです。右のリアクタンスカーブでの共振点(リアクタンスがゼロ)の左から2つ目に対応した抵抗成分が50オーム近くの扱い易い値になっています。この2つ目の共振周波数を目的周波数にあてはめる設計に使える基本特性が示されています。以下代表的なものを掲げます。


D/H対給電点インピーダンス特性
 D/H 対 インピーダンス特性です。横軸D/Hは左が減少側で細身、右が増加側で肥満形型のケージ形状です。 D/H の変化により2番目の共振固有値と共振インピーダンスを調整できることになります。



 下図 左は、D/H 対 2番目の固有値となる中心導体高さの関係です。 D/H を大きく採ると高さは低く押さえられます。
 下図 右は、D/H 対 2番目の固有値周波数とそこでの給電点インピーダンスの関係です。共振点ですからリアクタンス分はゼロです。
 下図 右は、D/H 対 アンテナゲインです。
D/H対第2共振周波数 給電インピーダンス特性 D/H対アンテナゲイン


タワー一辺寸法と給電インピーダンス特性
 三角タワーの一辺寸法を変えた時の給電インピーダンス特性の変化です。 W=45cm、W=60cm、W=90cm の3種類で大きくは変化していません。


END