位相検波器              最新改定 2021.Mar.01 JH3FJA

1.まえがき
2.基本原理
3.実際の回路  片波形回路 全波回路 ブリッジ回路 真空管カソードホロワ回路

1.まえがき

 対象の信号に同じ周波数のリファレンス信号を掛け合わせ得られる信号の直流分により元信号の振幅を測る形態の位相検波器の原理などを掲げています。 なお 位相検波器は同期検波器、同期整流器とも呼ばれます。

今日では演算増幅器(デバイス)の利用により直流・交流を問わず優れた性能の信号増幅器を比較的簡単に作ることが出来ますが過去においては図にあるような構成の変調増幅器として実現されていました。

2.基本原理

 対象信号 sinω1t に 同じ周波数・同じ位相の参照信号 sinω2t を掛け合わせる(乗算処理)と、その出力は三角関数の積和公式(式1)から差の項(前項)がもたらす直流成分と、和の項(後項)がもたらす2倍の周波数の交流の合成になります。これをローパスフィルタを通し交流分を除くと対象信号の振幅に対応した直流出力が得られます。
 ・・・ 式1

 図1は上の説明通りの構成(2つの入力を乗算処理した出力)を回路シミュレータ(LTspice)で描き要部の時間波形を得たものです。
 回路図において V1は対象信号を発する交流定電圧信号源、0.2V 0.6V 1.0V とシミュレーション回数毎に変化、周波数はいずれも60Hz一定で時間ゼロでゼロボルトから正に増大するサイン波です。 V2は参照信号を発する交流定電圧信号源、1.0V 60Hz一定で位相も対象信号に一致したサイン波です。 B1は任意の入力数・演算内容を関数で定義できる汎用電圧源で V1 V2を掛け算し OUTと言う名の電圧出力を得ています。 OUT2はOUTを更に R2 C1から成るローパスフィルタを通し交流分を低減して得た検波出力です。
 波形グラフは入力信号電圧3ケースの計算結果を重畳した描画になってます。 下段のグラフは信号入力電圧、中段は掛け算結果、上段がフィルタを通し平滑した検波信号です。


図1

黄緑/入力 0.2V
青/入力 0.6V
赤/入力 1.0V

 図2は対象信号V1の位相を反転し入力したケースです。 式1からも類推できますが平滑した検波出力の極性まで反転し負の電圧になります。


図2

黄緑/入力 0.2V
青/入力 0.6V
赤/入力 1.0V
参照電圧位相と180deg相違









V1の位相は図1と相違

  回路シミュレーションファイル
回路(V1V2同相) プロット定義(V1V2同相) 回路(V1逆相) プロット定義(V1逆相)

3.実際の回路

 もっとも代表的なシリコンダイオードの非線形性を掛け算要素として用いた同期検波回路数種と 昔のミリボルト計等で機械式チョッパと組み合わせ変復調式直流増幅器として構成されていた3極管による同期検波回路 を掲げます。
 いずれの回路においても V1が対象信号源、V2が参照信号源、OUT2が直流検波出力です。

(1) 片波形回路

 図3aのように構成した回路です。 図3b波形のように半波分は積極利用しないので検波効率は悪くはなります。


図3a
片波形回路


図3b
片波形波形

黄緑/入力 3V
青/入力 6V
赤/入力 9V
緑/入力 12V

(2) 全波回路

 図4aのように構成した回路です。 図4b波形のようになります。


図4a
全波形回路


図4b
全波形波形

黄緑/入力 0V
青/入力 3V
赤/入力 6V
緑/入力 9V
桃/入力 12V

(3) ブリッジ回路

 図5aのように全波回路を2つ平衡に配置した構成の回路です。 図5b波形のようになります。


図5a
ブリッジ形回路


図5b
ブリッジ形波形

黄緑/入力 0V
青/入力 3V
赤/入力 6V
緑/入力 9V
桃/入力 12V

(4) 真空管カソードホロワ回路

 図6aのように3極管特性を利用した構成の回路です。 片側コモンの出力取り出しとなるようコモン電位箇所が工夫されています。 図6b波形のようになります。


図6a
カソードホロワ形回路


図6b
カソードホロワ形波形

黄緑/入力 0V
青/入力 0.2V
赤/入力 0.4V
緑/入力 0.6V
桃/入力 0.8V



改定来歴:  2021.Mar.1 作成