●簡易電界強度計の製作 (最新改定 2004-Feb-15)
BC-611やMABの調整に使用できる電界強度計の製作です。 これらの軍用無線機は本体の一部を成すアンテナを含めた最終段の整合トランスやアンテナローディングインダクターの調整を運用状態に近い電波輻射環境で行うことが必要です。 その際にダイオード検波と高感度メータで構成される形態の電界強度計の感度では1mに満たない距離に被調整無線機を置き行うことになりますが、アンテナのふらつきなど距離変化による電界強度指示値の変動が大きくて難儀をします。 やってみられると分かりますが固定冶具でも無いと調整での変化と距離変動での変化が混在してしまいます。 例えば1mの距離で50cmアンテナが近接変化すると4倍の電界強度になってしまいます。そこで被調整無線機と電界強度計間の距離を10mとって調整作業をしますと50cm近接しても1.11倍にしかなりませんので少々アンテナがふらつこうと調整作業を安定して出来ます。
しかし、この様な距離での調整のためには電界強度計がそれなりの感度を持つ必要があります。 本品は廉価かつ製作所要時間短くそれを実現しようとしたものです。 なお、本品はAMラジオ用のストレートアンプICの周波数特性から7MHzバンドが上限になります。 HFバンドの全域において汎用的に使用できる電界強度計ではありませんので留意ください。(3.5MHz/7MHzでの感度は、100マイクロA電流計のフルスケール位置がアンテナ入力で各0.2mV/1mV程度です)
<回路構成>
この回路は3つの機能群から成っています。 1つはアンテナからU1の出力まで、同調、ストレート増幅、検波までの機能を持ちます。LA-1050はごく普通の300mWクラスの3本足のトランジスタと同じパッケージのICです。 VR1で検波までのゲインを可変します。
2つ目は右下の部分で、アナログメータを振らすためのメータアンプです。 U1の出力は直流分に交流分が重畳した電圧で、メータアンプはその直流分を分圧してベースに加えコレクタ電流の変化により生ずるコレクタ電位の変化でメータを振らせます。 メータのマイナス側はVR2の中点電位によりアンテナからの電波がない状態でゼロ点や任意位置に指針をセットすることが出来ます。
3つ目は右上の部分でイヤフォーンを鳴らす低周波増幅部です。 C4によりU1で検波された交流部だけがQ1のベースに入力され、コレクタ側の整合トランスの出力にマグネチックイヤフォーン(4〜16オームとかの)を鳴らすだけの電力として出力します。
なお、最小限の電界強度計としては、3つ目の低周波増幅部(C4、R7、Q1、R8、T2)はなくても使えます。
<詳細説明と注意事項>
U1、LA-1050は廃品種になっており店頭在庫だけですが、後継品のミツミLMF501Tが容易に入手できます。 1個100〜140円程度で機能(入力バッファ、70dBのAGC付ストレートアンプと検波回路)を考えると大変に安いものです。 これらのICの最大電源電圧は1.8Vなので注意が必要ですが、ミツミLMF501Tは短時間の3V印加でも潰れはしません。 Q1,Q2は2SC372、2SC1815、2SC495などが使えます。 足接続は左図の通りです。
入力の同調回路は手持ちのバリコンに合わせLを適当に巻いてください。 ハイLローCがどうのこうのなど気にせず共振周波数範囲だけ設計すればOKです。 当局製作品の場合はAM/FMポリバリコンのAM側1つと大昔のポケットラジオから収穫した小型バーアンテナをリッツ線を一度解き必要なだけ巻き作りました。1次側コイルは写真のようにビニール線を3回ほど巻いたものです。下の方にあるコイルは使っていません。
もし、新たにバリコンとアンテナコイルを買おうとされるのであれば100円AMラジオからの収穫が経済的です。 イヤフォーン駆動用のアンプ回路(専用イヤフォーンに100円の投資が伴いますが)、Q1トランジスタも収穫できてしまいます。
LEDは電源表示と定電圧回路を兼ねています。LEDの順方向電圧降下は色によって異なっており、赤色のLEDを使ってください。
メータはフルスケール100マイクロAのものが理想ですが、フルスケール1mAのものでも使えます。
表示が小さくて良ければ100円ショップの電池チェッカーのラジケータも使えます。
<製作例>
上面のBNC接栓が電界強度計のアンテナです。 パネル面は右上の黄色のツマミがメータのゼロ調整、右下の赤いツマミが感度(ゲイン)調整になっています。 同調は右側面の黒く見えている大きなツマミです。 右のLEDが電界強度計の電源表示、これが定電圧用を兼ねています。 左のLEDは別途紹介しています音響テレメータVCOの動作表示です。
電源スイッチは背中の方にあります
同調ツマミはポリバリコンに直結で、2.5MHzから12MHzをカバーします。こんなに周波数範囲が広くても大きな直径のツマミにより容易にチューニングできます。 左上の赤黒電線が3V電源ラインで、単4×2本の電池ケースとトグルスイッチが後ろ蓋に付いています。 ケースはOMから戴いたもので左右の板が鉄でがっちりしたものです。60mm角のメータ穴が開いており黒色樹脂板で化粧板を作り隙間を隠してあります。