TMC社CV-591A SSBコンバータのAVC回路            最新改定 2025.Apl.16 JH3FJA

 米軍用通信におけるSSB拡大期の真空管受信機+真空管SSBコンバータ構成においてポピュラーな機種の1つであったTMC社CV-591A SSBコンバータの初段に位置するAVC回路について、その特性を回路シミュレーションで推定してみたものです(コンバータへの入力である受信機IF出力は既にゲインコントールされた信号であり、制御の閉ループの外になる本AVCの意図を感じたかった)。

当該部ブロック図・回路図

ブロック図
 当該部のブロック図です。左、親受信機IF出力を受け1つはR1を通り V2 IFアンプへのパス、もう1つはV1A AVC用アンプ・AVC整流で得られたAVC電圧のパスです。前者は交流の信号、後者は直流の信号で、R1、R3の突き合わせで混合(重畳)動作します。

ブロック図
 当該部のブロック図です。左、親受信機IF出力を受け1つはR1を通り V2 IFアンプへのパス、もう1つはV1A AVC用アンプ・AVC整流で得られたAVC電圧のパスです。前者は交流の信号、後者は直流の信号で、R1、R3の突き合わせで混合(重畳)動作します。

 図中、AVC FAST・SLOW のスイッチポジションが反対になっています。誤りで R18、R57が並列になる方が FAST です。

回路シミュレーションモデル化

 作った全体回路モデルです。上述の回路図での配置イメージに合わせてあります。左上から左廻りで、入力模擬信号の発生部、デテクタアンプ・検波・時定数部、6BA6IFアンプDC系、グリッドDC電圧対gm関数、利得変化できる簡易5極管アンプのモデルです。
回路シミュレーションモデル
 LTSpiceファイルのダウンロード 回路モデルファイル  プロット設定ファイル一例

シミュレーション結果

<静的利得特性>
 一番知りたかった入力電圧に対する利得特性は次のようでした。テスト入力を変化させると時定数回路が動的に挙動するので入力(離散値)に対する過渡変化が完全に終った整定状態での計測値から求めた利得特性です。利得変化の幅は大きくはなくグラフの縦軸単位は倍です。
静的利得特性
<動的特性 FAST>
 外乱を含めた信号変化の包絡線が矩形パルス状になるよう外乱重畳した条件での挙動です。
 赤:V(emf)はIF信号源の電圧(起電力)、青:V(c14)はRC時定数回路の出力電位、緑:V(out)は6BA6IFアンプの出力電圧 です。

時定数:FAST
入力信号:
455KHz,50mV
外乱信号:
455KHz,1.95V
重畳時間:50mS

時定数:FAST
入力信号:
455KHz,200mV
外乱信号:
455KHz,1.80V
重畳時間:50mS
<動的特性 SLOW>
 FASTと同様、外乱を含めた信号変化の包絡線が矩形パルス状になるよう外乱重畳した条件での挙動です。横軸時間軸は倍半分違いすがグラフ描画は整定までの変化途中です。
赤:V(emf)はIF信号源の電圧(起電力)、青:V(c14)はRC時定数回路の出力電位、緑:V(out)は6BA6IFアンプの出力電圧 です。

時定数:SLOW
入力信号:
455KHz,50mV
外乱信号:
455KHz,1.95V
重畳時間:50mS

時定数:SLOW
入力信号:
455KHz,200mV
外乱信号:
455KHz,1.80V
重畳時間:50mS


6BA6 可変ゲインアンプのモデル
 結構歴史のある真空管特性のSPICEモデルですが、6BA6を含めgmのレンジアビリティの大きなリモートカットオフ管(6BA6ではgm10〜4000程)のものは海外(EF93)を含めありませんので、簡単なものを作りました。

 5極管アンプモデルはよく知られた電流源等価回路でグリッド電圧×gmの電流源と周辺回路からなります。G1電圧制御電流源の制御電圧端子側がgm値(の電圧)、↓記号側が出力電流です。グリッド電圧(DC成分)によるgm値の変化は6BA6のデータシートの特性から後述の模擬関数を作りました。
<グリッド電圧対ゲイン特性>

 アンプゲイン可変DC電圧V2を 3Vから9Vまで1Vステップで変化させた時のゲイン特性を見たものです。
横軸が周波数、縦軸が電圧ゲイン(dB)です。

 上の結果をプロットし直線関数で眺めたものです。横軸がグリッド電圧、縦軸がゲイン(dB)です。
  y = a0+a1*x
   a0 = 41.905714
   a1 = 5.1442857

<グリッド電圧対gm特性の模擬関数>

 次の指数関数でフィッティング(赤い線)、元のプロット8点は6BA6データシートから拾った値です。
  y = a0*e^(a1*x)
   a0 = 6409.3783
   a1 = 0.59159529
上端gm2000を切り下げると微小傾斜部が再現できるのですが、最良とされる手法でも更に寄せるのは困難でした。



cv591a_avc.htm

作成:2025.Apl.16