誘電体での損失                最新改定 2025.Mar.07 JH3FJA

誘電体損失  誘電正接(tanδ、Df)  誘電率および比誘電率  各種材料の特性値 

 誘電体での損失についてまとめています。

誘電体損失
 誘電体損失は誘電体に交流電場を加えた時、電場のエネルギーの一部が誘電体内部で熱となり失われる現象です。損失の程度は誘電体の特性に依存し、誘電正接と誘電率の値によって決まります。一般に周波数が高くなるほど/誘電正接が大きくなるほど/誘電率が大きくなるほど 損失が大きくなります。

誘電正接(tanδ、Df)
 読みはタンジェントデルタ、略してタンデルタ、工学分野ではDf(Dielectric Dissipation Factor)とも呼ばれます。
 容量成分だけでできた理想的な誘電体に交流電場を加えた場合、電場の位相と分極・電荷反転による電流の位相には90度の差があります。交流の電力消費は電場と電流のベクトル積で表されるので、両者の位相差が90度であればゼロとなり損失なしです。が、実際の誘電体では、並列等価抵抗成分が存在するので位相差は90度からずれており、その角度をδとすると、正接 tanδ は電場と電流が同位相となる成分に相当し損失に関与します。誘電正接は誘電損失に比例する係数で、大きいほど誘電損失が大きいことを意味します。

誘電率および比誘電率(εr、Dk)
 誘電率は、誘電体に電場を加えた時に単位電場に対し分極により発生する電荷の大きさを表す値(分極のし易さを表す指標)です。
 誘電率が高いほど単位電場に対し発生する電荷が大きくなるため、交流電場の場合には正負が反転する(振動する)電荷の量、すなわち交流電流が大きくなります。よって誘電正接がゼロでない限り、誘電率が高いほど電力消費が大きく損失は大きくなります。
 通常、誘電体の誘電率εそのものよりも真空の誘電率ε0に対する比である 比誘電率εr=ε/ε0 がよく使われます。比誘電率は工学分野ではDkやk(DielektrizitatsKonstante)と呼ぶこともあります。  このように誘電損失は、誘電正接と誘電率の値によって大きさが決まります。特に高周波では誘電損失を小さくするために、誘電正接が小さく、かつ誘電率の小さな誘電体材料が求められます。

各種材料の特性値
 表は、各種材料の 比誘電率、tanδ、損失係数 の一覧です。損失係数は誘電損失の相互比較に使える指標で比誘電率とtanδの積です。

材 質比誘電率 tanδ
 ×10E-4
損失係数
×10E-4
   備考   
 ポリスチレン(PS)2.5〜2.7   1〜46.5
 石英ガラス3.5〜4.51〜38.0
 ポリエチレン(PE)2.3〜2.4511.8
 ポリカーボネート2.9〜3.0913.3
 ポリプロピレン(PP)2.4〜2.65〜1828.8
 ファインセラミックス9654
 テフロン3〜430〜50140
 シリコン樹脂3.9〜4.120〜50140
 アセタール樹脂3.750〜70222
 ガラス6.5100325
 硬質塩化ビニール(PVC)2.8〜3.1100〜200   442.5
 ABS樹脂2.8〜3.070〜260478.5
 陶磁器6.0〜7.060〜100520
 メタクリル樹脂2.2〜3.2200〜300675
 ナイロン663.4〜3.64001400
 エポキシ樹脂3.3〜4.0300〜5001460
 メラミン樹脂4.7〜8.03001905
 ユリア樹脂5.0〜8.0280〜3201950
 フェノール樹脂4.5〜6.0400〜6002375
・tanδ:誘電正接
・比誘電率、tanδは1MHzでのもの
・損失係数は比誘電率およびtanδの各中間値を使い算出


改定来歴:  2025.Mar.07 作成