超再生受信回路 その2 振幅増大の連続化と検波
最新改定 2023.Aug.26 JH3FJA
その1
ではLC並列共振+負性抵抗器による振幅増大原理をみました。 その2では到来する連続変調信号の受信・復調に対応できる構成へと拡大してみます。
超再生受信系の基本構成と動作
増大を定量的に眺めてみる
クエンチングのスタイル
超再生受信系の基本構成と動作
下図は超再生受信回路の機能要素に着目した構成図です。
LC並列共振「LC tank」+負性抵抗器「NIC」による共振振幅増大動作に対して増大起点の初期値となる外来受信入力はM結合(L1,L2)で得ます。 左端の疑似信号源「(AM gen)」部分はで受信回路構成の範囲外で キャリア1560KHz、トーン1KHzのAM変調信号を作っています。
増大制止部「Quench」は、一定周期信号(qsig)を発する信号源(V1)と それに駆動されるスイッチ群(S3,S2,S1)からなりLCタンクの短絡/負性抵抗器の切り離し/負性抵抗器へのゼロ入力をすることで増大動作を制止します。
検波部「DET」は、上述信号流れの増大/増大制止/増大/増大制止の繰り返しで得た受信信号の振幅成分を持った櫛状波形の半波分を切り取り包絡線を形成し復調信号とします。
理想化ダイオード
(S4)とCRの時定数で包絡線形成しています。
以上が基本構成と動作ですが この図自身を「回路シミュレータで動く説明図」とするために複雑化していますが各要素はシンプルなものです。
主要な波形です。
復調AF信号
検波器入力
LCタンク
電圧
クエンチ
信号
到来信号元
起電力
増大を定量的に眺めてみる
LC同調回路の負性抵抗(−R)によるt=0時点の初期値E0なる起電力が時間経過とともに増大、t時間経過後のLC両端電圧の瞬時値eは次式の通りとなります。 負性抵抗では指数部が正となりeは増大変化を、普通の抵抗(R)では指数部が負となりeは減衰変化を示します。
クエンチ信号の1周期分を拡大的に眺め負性抵抗による振幅増大がクエンチ信号によって制止されるまでの増大変化の平均値を求めると次式の通りになります。 ここで pはクエンチ周波数相当の角速度(ラジアン/秒)、π(パイ)はクエンチ周期の半分の時間 増大を許す条件で、Eはπ/p秒間の増大変化の平均値です。
この感度相当と見なせる増大電圧の平均値を大きく採るには、寄与が大きいイプシロンの指数部に着目して、負性抵抗Rを大きく採る、同じ固有値のLC共振回路でもLは小さめの方が有利、クエンチング周波数を高めても効果は出難い等々が見えてきます。
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クエンチングのスタイル
以上で超再生受信回路におけるクエンチングがその肝である感触は得られましたが過去の実際的なクエンチングのスタイルは次の2つに大別出来ます。 詳しくは(その3)で紹介予定です。
A.共振増大部に対し強制的なクエンチ周期を与える独立したクロック部を持つスタイル
上述説明の構成図はこれにあたります。 他励超再生回路、外部クエンチ構成 等と呼ばれます。
B.共振増大部にクエンチ周期を得る自律的なクロック生成部を持つスタイル
よくある構成はこちらです。 自励超再生 等と呼ばれます。
END
改定来歴: 2023.Aug.26 作成